投稿日:2024.10.18
矯正治療前に知っておくべき!セファロ分析の重要性~セファロを撮らない矯正歯科は危険?~
こんにちは。
横浜駅から徒歩3分 横浜駅前歯科・矯正歯科 歯科衛生士の浦木です。
みなさんは、「セファロ分析」という言葉を聞いたことがありますか?
セファロ分析は、歯の位置関係や骨格のバランス、成長の傾向などを詳細に調査し、矯正治療の計画立案や治療結果の評価をすることです。
矯正治療において「正しい診断」と「適切な治療計画の立案」は矯正治療が成功するかを決める非常に重要なものです。
しかしながら、セファロ分析をしない歯科医院があることも事実です。
間違った診断の上に、正しい治療計画は成り立ちません。
そこで今回は、矯正前に知っておくべき「精密検査のセファロとは何か。」「セファロ分析によって何がわかるのか。」そして、その「重要性」など詳しく解説していきます。
目次
精密検査のセファロとは?
セファロは頭部X線規格写真
セファロとは、セファログラムという頭部X線規格写真のことです。
つまり、決められた条件で撮影された頭のレントゲン写真のことをいいます。
1931年にアメリカのBroadbendや、ドイツのHofrathによって確立されました。
撮影規格は世界共通で、X線管球の焦点からフィルムまでの距離と、被写体からフィルムまでの距離が決まっています。
当院では、矯正を始める前の精密検査や、矯正終了時の資料採得時に、セファロを撮影しています。
- X線管球の焦点ーフィルム:165cm
- 被写体ーフィルム:15cm
セファロは3種類
セファロは、撮影方向によって3種類に分けられます。
- 側方頭部X線規格写真(ラテラルセファロ)
- 正面頭部X線規格写真
- 斜位頭部X線規格写真
1番目の側方頭部X線規格写真は、“ラテラルセファロ”と呼ばれています。
矯正歯科で“セファロ”というと、このラテラルセファロを指すことが一般的です。
3番目の「斜位頭部X線規格写真」は現在使われていません。
セファロから何がわかるの?
側面頭部X線写真(ラテラルセファロ)からわかることは以下のとおりです。
セファロ分析とは?
セファロ分析は“顔の形態的特徴を数値化し、標準値と比較・評価”するもの
セファロ分析とは、撮影したセファロから顔面を構成する組織の形態的特徴を数値化し、標準値と比較・評価するというものです。
この標準値は、世界共通の規格で撮影されたセファロの膨大なデータから導き出された、【人種】【性別】【年齢】などに合わせたものです。
標準値と比較することで、問題を解析・把握することができます。
また、成長による経時的な変化の観察をするのにも役立ちます。
矯正医は、このセファロ分析の結果をもとに治療計画を立てたり、治療後の評価をおこないます。
したがって、セファロ分析は矯正治療には欠かせないものであるといえるでしょう。
セファロ分析の方法
従来は、以下のようにアナログな手順でセファロ分析をおこなっていました。
- シャウカステンにセファロのレントゲンフィルム、その上にトレーシングペーパーを置き、必要な硬組織や軟組織のトレース(透写図)を作成
- 計測点をマーキング(プロット)し、必要な線を引く
- 分析に必要な距離・角度を計測して、標準値と比較・分析
現在ではデジタル化が進み、矯正診断ソフトを使って、トレースからプロット、分析まで、すべてパソコン上でおこなえるようになりました。
それでは次に、具体的にどこの何を計測しているのか、ご説明します。
※ここから歯科医師・歯科衛生士の国家試験レベルのお話になりますので、興味のない方は「セファロ分析で上顎前突(出っ歯)の原因が原因がわかる?」に進んでください。
代表的なセファロの計測点と基準平面
- Nasion(ナジオン):前頭鼻骨縫合の最前点
- Sella turcica(セラ):トルコ鞍の中心点
- Orbitale(オルビターレ):左右側眼窩下縁の最下点の平均化した点
- Porion(ポリオン):外耳道の頂点
- PointA(A点):Porosthion(上顎中切歯間歯槽突起最先端点)とANS(前鼻棘)との間の正中矢状面における最深点。
上顎歯槽基底の前方限界点 - PointB(B点):Infradentale(下顎中切歯間歯槽突起最先端点)とPogonionとの間における正中矢状面における最深点。
下顎歯槽基底の前方限界点 - Anterior Nasal Spine:前鼻棘の先端
- Posterior Nasal Spine:後鼻棘の先端
- Pogonion(ポゴニオン)オトガイ隆起の最前方点
- Menton (メントン):Symphysis 正中矢状面の最下方に位置する点
- S-N plane(SN平面):セラとナジオンを結ぶ平面
- FH plane(Frankfort horizontal plane/フランクフルト平面):左右のポリオンと左側オルビターレとを結ぶ水平線
- Mandibular plane(下顎下縁平面):メントンを通り、下顎角部下縁に接する平面
代表的なセファロの計測角度・距離
ここでは代表的な計測角度・距離を骨格系、歯系、軟組織にわけてご紹介します。
骨格系の計測角度・距離
- SNA:SN平面とNA線とのなす角度。前頭蓋底に対する上顎歯槽基底部の前後的な関係を評価する。=骨格性の上顎前突(出っ歯)なのか、または下顎前突(受け口)なのか
- SNB:SN平面とNB線とのなす角度。前頭蓋底に対する下顎歯槽基底部の前後的な関係を評価する。=骨格性の下顎前突(受け口)なのか、または上顎前突(出っ歯)なのか
- ANB:SNAよりSNBの値を引いた値。上顎歯槽基底部と下顎歯槽基底部の前後的な関係(上下顎の相対的なバランス)を評価する。標準値より大きいと骨格性の上顎前突、小さいと骨格性の下顎前突であることを示す。
- FMA:下顎下縁平面とフランクフルト平面のなす角度。骨格性の垂直的な問題を評価する。
歯系の計測角度・距離
- U1 to FH:上顎切歯歯軸とフランクフルト平面のなす角度。上顎前歯部の傾斜角度を評価する。
- FMIA(L1-FH):下顎切歯歯軸とフランクフルト平面のなす角度。下顎前歯部の傾斜角度を評価する。
- IMPA:下顎切歯歯軸と下顎下縁平面のなす角度。下顎前歯部の傾斜角度を評価する。
- U1 to A-Pog:上顎中切歯からA-Pog(A点とポゴニオンを結んだ線)の距離。上顎前歯の突出量を評価する。
- L1 to A-Pog:下顎中切歯からA-Pog(A点とポゴニオンを結んだ線)の距離。下顎前歯の突出量を評価する。
軟組織系の計測角度・距離
- Lower lip toE-plane:下唇とEラインの距離。下唇の突出量を評価する。
- Nasolabial angle(鼻唇角):鼻基底部接線と上口唇接線がなす角度。上顎歯槽基底部の突出度を評価する。
セファロ分析で上顎前突(出っ歯)の原因がわかる?
「代表的セファロの計測角度・距離」でご説明したとおり、セファロ分析の結果から、不正咬合の原因が見えてきます。
たとえば、上顎前突(出っ歯)の原因は、4つの原因にわけられます。
- 【歯が原因】上の前歯が前に傾斜している
- 【歯が原因】下の前歯が内側に傾斜している
- 【骨が原因】上顎骨が大きい
- 【骨が原因】下顎骨が後退している
これに加えて、歯の原因と骨の原因が混在している場合もあります。
このようにセファロ分析をおこなうことにより、上顎前突(出っ歯)1つであっても、原因はさまざまです。
そして、その原因によって、「治療計画」や「目標とする治療のゴール」も変わってきます。
矯正医はこのセファロ分析を含めた精密検査の結果をもとに、診断し、治療計画を立案しているのです。
CTによる3Dのセファロ分析とは?
現在主流になってきているのが、CTによる3Dのセファロ分析です。
従来のセファロ分析は、人間の頭部が左右対称であると仮定された分析でした。
そのため、実際には左右非対称の頭部の詳細な分析は、やや無理があると言われていました。
CTによる3Dのセファロ分析では、左右非対称の頭部をさらに詳細に分析できるようになっています。
当院でも、CTによる3Dのセファロ分析をおこなっています。
まとめ
今回は、矯正前に知っておくべき「セファロとは何か」「セファロ分析の重要性」についてご説明いたしました。
患者さん一人一人、不正咬合の原因や程度は異なります。
それを把握し、「正しい診断」や「適切な治療計画の立案」をするために、セファロ分析がいかに重要かご理解いただけたのではないでしょうか。
矯正治療を始めようとお考えのかたは、ぜひセファロ分析をおこなっている矯正歯科を選んでいただきたいです。
当院では、患者さんに安心・安全な矯正治療を受けていただくため、矯正治療前の精密検査時と矯正治療終了時には、必ずセファロ・CTを撮影しております。