投稿日:2024.4.26
噛み合わせは健康寿命に大きく影響する⁉〜噛み合わせが悪いカピバラの死~
みなさん、こんにちは。横浜駅から徒歩3分 横浜駅前歯科・矯正歯科 歯科衛生士の浦木です。
3月に出張で渋谷矯正歯科グループの『札幌キュア矯正歯科』に行ってまいりました。
休日には旭山動物園を楽しんできたのですが、カピバラの展示室で悲しいお知らせを目にしました。(上の写真)
カピバラのはるかちゃんが
「不正咬合(ふせいこうごう)による摂食障害のため衰弱で死亡しました」
というものです。
つまり、歯の噛み合わせが悪いことによって食事ができなくなり、亡くなってしまったということです。
そこで今回は、なぜカピバラは歯の噛み合わせが悪いと死んでしまうのか、人間の噛み合わせや歯並びも(健康)寿命に影響するのか、まとめてみました。
ぜひ読んでみてください。
目次
噛み合わせが悪いとカピバラは死ぬ?
カピバラを知ろう
まずは、カピバラがどんな動物なのか、知っておきましょう。
カピバラとは?
カピバラは鬼天竺鼠(オニテンジクネズミ)という和名がついた齧歯目(げっしもく)に分類されるネズミの仲間です。
体長は約80cm、体重は最大50~60kgと、ネズミの仲間の中で最大種です。
齧歯目(げっしもく)とは?
齧歯目は、哺乳類の分類群の一つで、前歯が伸び続けるという特徴を持つ動物のグループです。
齧歯目に属する動物の総称を齧歯類(げっしるい)といいます。
齧歯目(類)の“齧(げつ)”という漢字には「かじる」という意味があります。
ラテン語の「かじる」という意味の言葉“rodens”から、英語の“Rodentia(齧歯目)”が生まれたと言われています。
ネズミがずっと硬い植物をかじっていることに由来します。
代表的な齧歯類
- ネズミ
- リス
- モルモット
- ヤマアラシ など
カピバラの食事
カピバラは草食動物です。
水草や果物などを食べます。
動物園ではペレットなども食べています。
噛み合わせが悪いとカピバラが死ぬ理由
カピバラの前歯は、生涯伸び続けます。
歯が伸びすぎると噛みづらくなるため、カピバラを含めた齧歯類は、石や木の枝をかじって歯を削ります。
歯が伸びすぎてうまく噛めなくなると、食事ができなくなり、栄養失調で死んでしまうのです。
人間の噛み合わせも(健康)寿命に影響する?
健康寿命とは?
「平均寿命」は“0歳における平均余命”のこといいますが、「健康寿命」とは、“健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間”のことをいいます。
平均寿命と健康寿命の差は、日常生活に制限がある“不健康な期間”を意味します。
現状、日本人における平均寿命と健康寿命にはどれほど差があるのでしょうか?
令和元年(2019年)における平均寿命は、男性81.41歳、女性87.45歳です。
一方、健康寿命は男性が72.68歳、女性は75.38歳となっています。
平均寿命と健康寿命の差は、男性では約9年、女性では約12年もあります。
多くの高齢者は、何らかの健康上の問題で日常生活が制限された期間を過ごしているということがわかります。
引用:厚生労働省 第16回健康日本21(第二次)推進専門委員会 「健康寿命の令和元年値について」資料3-1 令和3年12月20日発行
このことから、平均寿命と健康寿命の差を縮める(=健康寿命をのばす)ことが、QOL(生活の質)の向上につながると考えられます。
健康寿命とお口の健康の関係
実は、口腔疾患(お口の中の不健康)は、健康寿命を喪失させるということがわかっています。
口腔疾患(歯の喪失、虫歯、歯周病)は健康寿命を喪失させる
高齢者(70歳以上)の健康寿命を喪失させる10大原因の1つに「口腔疾患(歯の喪失、虫歯、歯周病)」があげられます。
高齢者(70歳以上)の健康寿命を喪失させる10大原因(高所得国)
- 腰痛
- 加齢による難聴
- 糖尿病
- 転倒
- COPD
- アルツハイマー型認知症
- 変形性関節症
- 脳卒中
- 口腔疾患(歯の喪失、虫歯、歯周病)
- その他の筋骨格系疾患
引用:厚生労働省 第10回循環器病対策推進協議会「成人期における口腔の健康と全身の健康 の関係性の解明のための研究」 令和4年11月25日発行
「9.口腔疾患」の“歯の喪失”の2大原因は“歯周病”と“虫歯”です。
また、歯周病は糖尿病やアルツハイマー型認知症、脳梗塞、心筋梗塞、誤嚥性肺炎など、さまざまな全身疾患に関与しています。
すなわち、歯周病と虫歯を予防することが、健康寿命をのばすことにつながるといえるでしょう。
噛み合わせが悪いと歯を失う⁉︎
みなさんは“8020運動”という言葉をご存知でしょうか?
“8020運動”は、1989年(平成元年)から厚生省(当時)と日本歯科医師会が推進する
「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」
という運動です。
歯が20本以上あれば、食生活にほぼ満足できると言われており、
「生涯にわたって自分の歯で食べる楽しみを味わえるように」
と、この運動が始まりました。
2005年に文京区と千葉市で行われた8020達成者の咬合調査によると、8020達成者の中に、反対咬合(はんたいこうごう)と開咬(かいこう)の噛み合わせの人はいませんでした。
8020達成者の噛み合わせは、上下前歯の前後的関係は正常84.6%,上顎前突(じょうがくぜんとつ)15.4%,反対咬合0%、垂直的関係は正常86.5%,過蓋咬合(かがいこうごう)13.5%,開咬0%という結果でした。
引用:『Dental Prescale®️を用いた8020達成者の咬合調査』竹内, 史江; 宮崎, 晴代; 野村, 真弓; 茂木, 悦子; 原 崎, 守弘; 谷田部, 賢一; 山口, 秀晴; 平井, 基之; 佐 藤, 晃一 歯科学報 105(2)154-162,2005年
反対咬合や開咬は正常咬合に比べて奥歯への負担が大きく、歯を喪失するリスクが高くなると言われています。
また、上顎前突(じょうがくぜんとつ)といういわゆる出っ歯の状態も、歯を喪失するリスクが高くなります。
上顎前突は、前歯の破損のリスクが高くなるだけではなく、唇が閉じづらく口呼吸になりやすいため、唾液の洗浄作用や抗菌作用などが十分働かなくなります。
そうすると、虫歯や歯周病にかかりやすくなり、歯を喪失するリスクが高まるのです。
また、叢生(そうせい)といって歯のガタつきがある場合も、ガタつきが激しいと歯磨きが難しく、虫歯や歯周病にかかりやすくなり、歯を失うリスクが高くなります。
すなわち、噛み合わせの悪さも健康寿命に影響するというわけなのです。
あわせて読む≫≫≫【実は矯正するべき歯並び・噛み合わせ2選!“自分は歯並びが良い”は思い込み!?】
健康寿命をのばすためにお口の中からできること
健康寿命をのばすためにお口の中からできることは、歯の喪失を防ぐこと=虫歯・歯周病予防と噛み合わせの改善です。
では、具体的に何をすれば良いのかご説明します。
歯医者さんで定期検診を受ける
半年に1回は歯医者さんで虫歯と歯周病のチェックをしてもらいましょう。
定期的に歯医者さんに行くことで、虫歯・歯周病の予防や早期発見ができます。
虫歯や歯周病の原因であるプラークは自分で100%キレイに落とすことはできません。
定期的に歯医者さんでプラークや歯石をとってもらいましょう。
正しく歯ブラシとフロスを使う
定期的に歯医者さんでプラークや歯石を落としてもらうだけでは、虫歯や歯周病を防ぐことはできません。
毎日、“正しく”歯ブラシとフロスを使うことが大切です。
正しい歯磨きの方法や歯ブラシの選択は、歯並びや歯茎の炎症の状態によって変わってきます。
ぜひ歯医者さんに行って、今のあなたのお口の中の状態に合った歯磨き指導を受けてみてください。
フロスの正しい使用法はこちら。
引用:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト
食生活の改善
ダラダラと飲食したり、食後に歯磨きをしないで寝てしまったりを繰り返していると、虫歯や歯周病になるリスクが高くなります。
毎食後に歯磨きをしたり、甘いものは食後や時間を決めて食べ、お口の中を清潔に保ちましょう。
あわせて読む≫≫≫【矯正中の方必見!知っていればよかった!矯正中の飲み物とお砂糖の関係とは?】
歯列矯正をする
歯並びや噛み合わせが悪い方は、まずは矯正歯科で相談してみましょう。
歯列矯正は基本的に保険が効きませんし、すぐに終わる治療ではないため、気軽に始められるものではないと思います。
まずは矯正歯科でのカウンセリングで、治療期間や支払い方法、使用する装置などについて聞いて、じっくり考えてみましょう。
まとめ
歯列矯正によって歯並びが良くなると、歯が磨きやすくなり、歯を失う2大要因である虫歯や歯周病のリスクを下げることができると考えられます。
また、前歯の破損や口呼吸の原因となる上顎前突や、反対咬合や開咬のような奥歯に負担がかかるような不正咬合を改善することによって、歯を失うリスクを下げることが期待できます。
歯の健康を保ち、生涯自分の歯で食事をすることは、健康寿命の延伸に深く関わってくると考えられています。
歯並び・噛み合わせに不安のある方は、まずはお気軽に矯正歯科でカウンセリングを受けることをおすすめします。
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