投稿日:2024.12.13
歯列矯正を始める前に知っておくべき!矯正歯科の精密検査でCT撮影が必要な理由
こんにちは。
横浜駅から徒歩3分 横浜駅前歯科・矯正歯科 歯科衛生士の浦木です。
みなさんは、歯医者さんでCTを撮影されたことはありますか?
埋まっている親知らずを抜く際、CT撮影をしてもらったというかたは、いらっしゃるのではないでしょうか。
実は、矯正歯科でもCT撮影はおこないますし、とても重要な精密検査の項目の一つです。
そこで今回は、矯正治療を検討している方に安全で適切な矯正治療を受けていただくため、『歯科用CT』について詳しく解説していきます。
目次
歯科用CTとは?
CTとは?
CTとは「Computed Tomography」の略で、コンピューター断層撮影のことをいいます。
撮影部位に多方向からX線を照射して、水分、骨、脂肪、空気など、体内の成分によるX線の吸収率の違いをコンピューターで処理し、撮影部位の断面(輪切りの状態)を画像にします。
X線が通過しやすい空気などは黒く、通過しにくい骨や歯などは白く映し出されます。
歯科用CTの特徴~医科用CTとの違い~
医科用CTはファンビームCTとよばれX線束が扇型に照射されるのに対し、歯科用CTはCBCT(コーンビームCT)とよばれX線束が円錐形に照射されます。
ファンビームでは基本1周の撮影につき1枚の画像しか撮影できないのに対し、コーンビームでは1周の撮影で数百枚の画像が撮影可能です。
これにより、短時間・低被爆で細かい輪切り画像を取得することができます。
また、歯科用CTは医科用CTより高解像度であるため、歯や骨などの詳細をみることができます。
さらに、金属アーチファクト(障害陰影)という画像の乱れも目立ちにくいので見やすいです。
撮影装置はコンパクトで、椅子に座って、もしくは立った状態で、10~20秒ほどの撮影時間で終了します。
撮影時に着替える必要もありません。
3DCTとは?
3DCTとは、CTの技術を用いて撮影された断面像をもとに描き出される3D(立体)画像のことです。
医科用CTは、撮影後に輪切り画像が取得され、3D画像を見たい場合には「画像の再構成」というコンピュータ処理が必要となります。
一方、歯科用CTでは、撮影後すぐに自動的に画像の再構成がおこなわれ、機種にもよりますが撮影から60秒以内で3D画像を見ることができます。
もちろん輪切り画像も見られます。
3D画像は、臓器や骨、歯などの状態をイメージしやすいという特徴があります。
そのため、患者さんへの説明に用いられることはもちろん、手術や歯列矯正の治療計画立案にも利用されます。
矯正治療におけるCTの役割
歯科用CTとその他レントゲンの大きな違い・特徴
歯科用CTとその他レントゲンの大きな違いは、3D(3次元)か2D(2次元)か、というところにあります。
一般歯科でよく撮られているレントゲン写真(X線写真)には、「パノラマX線写真」と「デンタルX線写真」というものがあります。
それに加え、矯正歯科では、「セファログラム(頭部X線規格写真)」という頭部のレントゲン写真を撮影します。
歯科用CTの画像が3D(3次元)で立体的であるのに対し、パノラマX線写真、デンタルX線写真、セファログラムの画像は2D(2次元)で平面的です。
より正確に体内を表現する3DCTは、より正確な診断と、より良い治療につながり、患者さんにも利益をもたらすものといえるでしょう。
歯科用CTでわかること
安全な矯正治療を提供するために矯正医がみている重要チェックポイント
- 歯槽骨(しそうこつ)の幅
- 切歯管(せっしかん)の大きさと位置
- 上顎洞底(じょうがくどうてい)の高さ
- 骨硬化像(こつこうかぞう)
- 埋伏歯(まいふくし)の3次元的な位置や、神経との位置関係
1.歯槽骨(しそうこつ)の幅
叢生(そうせい/がたつきのある歯並び)を改善するために無理な歯列拡大をした場合、歯根が歯槽骨(歯を支えている骨)から露出し歯肉退縮することが、非抜歯矯正、床矯正、マウスピース型矯正装置による矯正で度々問題になっています。
歯肉退縮が起こると、それに付随して知覚過敏を起こすこともあります。
この歯列拡大による歯肉退縮・知覚過敏を防ぐには、拡大しても問題のない十分な歯槽骨の幅があるかどうかをCTで確認する必要があります。
また、上顎前突(じょうがくぜんとつ/いわゆる出っ歯)や上下顎前突(じょうげがくぜんとつ/上下顎の出っ歯)を改善するために前歯を引っ込める場合、前歯を移動させる方向の骨の幅が不十分だと、過剰な歯根吸収(しこんきゅうしゅう/歯の根っこの先が吸収されて短くなる)や失活(しっかつ/歯の神経が死ぬ)などのリスクがあります。
歯根吸収や失活を防ぐためにも、上下顎の歯槽骨の幅や形態を把握しておく必要があります。
2.切歯管(せっしかん)の大きさと位置
上あごの前歯の後ろには「切歯管(せっしかん)」という神経や血管が通る管があります。
上顎前突(いわゆる出っ歯)や上下顎前突(上下顎の出っ歯)を改善するために前歯を後ろに移動させる場合、切歯管が小さく前歯の歯根から遠ければ、十分に移動させることができます。
しかし、切歯管が大きく前歯の歯根に近接している場合、上あごの前歯を後ろに移動させると、上あごの前歯の過剰な歯根吸収や失活(歯の神経が死んでしまう)などの可能性があります。
切歯管が大きく前歯の歯根に近接している場合は上あごの前歯を後ろへ移動させることができないため、治療のゴールを検討する必要があります。
3.上顎洞底(じょうがくどうてい)の高さ
上顎洞底(じょうがくどうてい)とは、副鼻腔のひとつである「上顎洞」の底の部分のことをいいます。
上顎洞底が低いと、奥歯を動かすのに時間がかかり、治療期間が長引くことにつながります。
そのため、上顎洞底が低い場合は、奥歯の移動量が少なくなるよう考慮した治療計画を立てます。
また、アンカースクリュー(矯正用インプラント、TADともいう)埋入時は、副鼻腔炎などで上顎洞が炎症を起こしていたり、上顎洞底が低い場合、アンカースクリューが上顎洞底に近接すると頬全体がしびれるような感覚を生じることもあります。
そのため、アンカースクリューは上顎洞を避けて埋入位置を決定しますが、上顎洞底の高さによっては埋入できないこともあります。
安全にアンカースクリューを埋入するためにも、CTは必須です。
4.骨硬化像(こつこうかぞう)
歯槽骨の表面は「皮質骨(ひしつこつ)」という硬い骨で覆われていて、その内部はスポンジ状の多数の穴をもつ「海綿骨(かいめんこつ)」という骨です。
CTでは、硬い皮質骨は白く映し出され、多数の穴をもつ海綿骨は黒っぽく映し出されます。
この黒っぽく見える海綿骨の中に映し出された白いかたまりのような像を「骨硬化像(こつこうかぞう)」といいます。
骨硬化像がみられる部位では、歯の動きが制限されるため、3次元的な画像で骨硬化部位を確認し、治療計画を立てる必要があります。
5.埋伏歯(まいふくし)の3次元的な位置や神経との位置関係
あごの骨の中に埋まっている歯を「埋伏歯(まいふくし)」といいます。
埋伏歯を矯正治療で引っ張り出したり、埋伏している過剰歯(かじょうし/余分な歯)の抜歯を検討する場合など、隣の歯との3次元的な位置関係などを確認することで、治療計画に役立てます。
また、埋伏している下あごの親知らずを抜歯する際、親知らずと下あごの神経が近接したり重なったりしていると、下あごに麻痺やしびれがでてしまうことがあります。
CTを撮影することにより、重要となる神経との三次元的な位置関係を把握し、安全な抜歯の計画を立てることができます。
歯科用CTの安全性・被ばく量
東京-ニューヨークを飛行機で往復するより、被ばく量は少ない
医科用CTによる被ばく量が1回あたり5~30mSv(ミリシーベルト)であるのに対し、当院の歯科用CT『3Dexam』による被ばく量は、1回あたり0.074mSv程度です。
普段の生活の中で誰もが受ける放射線を「自然放射線」といいますが、日本での一人当たりの自然放射線の年間被ばく量は、平均で約2.1mSvほどです。
飛行機で東京‐ニューヨーク間を往復する場合は、0.19mSvほどの被ばく量になることから、歯科用CTは被ばく量が非常に少なく、安全であることがおわかりいただけると思います。
引用:環境省 放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成30年度版)第2章 放射線による被ばく「身の回りの放射線」
より予見性の高い診断を支援する直感的3Dイメージングシステム KaVo, the ultimate in x-rays innovation P.6「安全性と使いやすさの高次元での融合」
当院の歯科用CT撮影の流れと注意点
歯科用CT撮影の流れ
- 眼鏡やアクセサリー類を外す
- 防護エプロンを着用する
- 座った状態で、頭を固定して撮影(17~18秒)
アクセサリーの写りこみを防止するため、メガネやピアス、ヘアピンなどのアクセサリー類は外しましょう。
また、後頭部にボリュームのあるヘアセットは、頭部を固定する際の妨げになりますので、髪の毛はおろした状態でお越しください。
歯科用CTの被ばく量はごくわずかなため、防護エプロンを着用しなくても問題はありませんが、患者様に安心して撮影していただくために、基本的には防護エプロンを着用していただいております。
撮影中に動くと画像が乱れますので、撮影中は動かず、唾液も飲み込まないようにしましょう。
妊娠中や妊娠の可能性があるかたへの注意点
妊娠中や妊娠の可能性があるかたは、CT,パノラマX線写真、セファログラムの撮影を原則控えておりますので、撮影前にスタッフにお申し出ください。
妊娠されているかたが矯正治療をお考えの場合は、出産後に矯正治療を開始されることをおすすめします。
それはなぜかというと、不十分な精密検査では、適切な診断と治療計画の立案ができませんし、妊娠中や妊娠の可能性がある場合には、抜歯やアンカースクリュー埋入もできないからです。
しかし、抜歯やアンカースクリュー埋入などの外科的処置が終わっていれば、矯正中に妊娠しても、ほとんどの場合問題になることはありませんので、ご安心ください。
当院の患者さんの中にも、矯正中に妊娠・出産されるかたはいらっしゃいます。
当院の精密検査
当院では、初回カウンセリング後に、以下の7つの検査をおこなっております。
- 問診
- 口腔内写真
- 顔貌写真
- パノラマX線写真
- セファログラム(頭部X線規格写真)
- CT
- 光学印象(口腔内スキャン)
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まとめ
歯科用CT(3DCT)では、2Dの画像で見えなかったものが可視化され、より正確な診断が可能になりました。
患者さん一人ひとりのリスクを予測し、安全性の高い治療をおこなえることは、患者さんの大きなメリットになるのではないでしょうか。
今回の記事が、矯正歯科選びでお悩みのかたのお役に立てれば幸いです。