「歯列矯正に興味があるけど、治療期間はどれくらいかかるんだろう?」
「治療期間を短くする方法は?」
「矯正治療中の通院頻度は?」
歯並びが気になる大人の方にとって、歯列矯正は魅力的な選択肢の一つです。
しかし、治療期間の長さが気になる方も多いのではないでしょうか?
結論から言うと、大人の矯正治療には1~2年程度の期間が必要です。歯列矯正の治療期間は、歯並びの状態や治療方法によって異なります。
本記事では、大人の歯列矯正の期間について、詳しく解説していきます。
目次
大人の矯正治療の種類
全体矯正
上下顎全ての歯並びを対象とした矯正治療です。歯並び全体を理想的な状態に整えることで見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや発音、顎関節の機能改善など、さまざまな効果が期待できます。
部分矯正
部分矯正は、気になる部分に焦点を当てた矯正方法です。一般的に、治療期間は数ヶ月から1年程度で、全体矯正よりも短期間で治療を完了できることが多いです。
部分矯正は、軽度の歯並びの乱れを改善したい方に向いています。たとえば、前歯のわずかな隙間や傾き、軽度の出っ歯などを効率的に治すことができます。
ただし、部分矯正では、噛み合わせの調整は行いません。そのため、噛み合わせに問題がある場合は、全体矯正が必要となります。
大人の歯列矯正で用いられる装置の種類
大人の歯列矯正では、様々な装置が用いられます。大きく分けると、ワイヤー矯正とマウスピース矯正の2種類があります。
ワイヤー矯正
歯の表面にブラケットと呼ばれる小さな装置を付け、そこにワイヤーを通して歯を動かしていく方法です。矯正力が強く、さまざまな症例に対応できます。
また、ワイヤー矯正には表側矯正と裏側矯正があります。表側矯正は。ブラケットとワイヤーを歯の表側に装着する方法。費用が比較的安価で治療期間も短くなる傾向があります。
裏側矯正は、ブラケットとワイヤーを歯の裏側に装着する方法。外から目立ちにくいのが特徴ですが、費用が高額になり、治療期間も長くなる傾向があります。また、発音に影響が出たり、舌に違和感を感じたりすることがあります。
マウスピース矯正
透明なマウスピース型の装置を装着して歯を動かしていく方法です。取り外しができ、目立ちにくいのが特徴です。
また、金属を一切使用しないため、金属アレルギーの方でも安心して使用できます。ただし、適応症例が限られており、中等度~重度の歯並びの改善には不向きな場合があります。1日20時間以上の装着が必要なので、自己管理が求められます。
歯列矯正に時間がかかる理由
歯列矯正って、どうして時間がかかるのか気になる方もいるでしょう。
歯列矯正では、矯正装置を使って歯に圧力をかけることで、歯を支えている歯槽骨を少しずつ変化させていきます。骨は硬いイメージがありますが、常に「骨代謝」という新陳代謝を繰り返しています。古くなった骨は破骨細胞によって壊され、新しい骨は骨芽細胞によって作られ骨の形を少しずつ変えていくのです。
歯と骨の間には「歯根膜」という薄い膜があって、これがクッションのような役割を果たしています。この膜が押されたり引っ張られたりすることで、破骨細胞と骨芽細胞が活発に働き始めます。
具体的には、矯正装置で歯に圧力をかけると、押された側の骨は、「破骨細胞」という細胞が頑張って古い骨を壊してくれます。一方で、反対側の骨では、「骨芽細胞」が新しい骨を作って、隙間を埋めていきます。このように、骨が壊され、作られることで歯は少しずつ移動していくのです。
しかし、歯の移動はそう単純ではありません。たとえば、前歯を後ろに動かしたい場合、奥歯を固定源として力をかけますが、その力によって奥歯も動いてしまうことがあります。歯同士が影響し合い、思い通りに動かすのが難しいケースもあるのです。
しかし、近年では、歯を支える骨に小さなネジを埋め込む「歯科矯正用アンカースクリュー」といった方法が登場し、歯の移動をより精密にコントロールできるようになってきました。
大人の矯正治療はどれくらいの期間がかかる?
大人の矯正治療は1年~2年半程度の期間が必要となります。しかし、これはあくまでも平均的な目安であり、実際の治療期間は、歯並びの状態や治療方法によって異なります。
たとえば、軽度の歯並びの乱れを整える部分矯正であれば、数ヶ月で治療が完了することもあります。
一方、歯並び全体を大きく改善する全体矯正の場合は、1年半~3年程度の期間が必要となることが多いです。特に、重度の叢生(歯の重なり)や、顎の骨格的な問題がある場合は、治療期間が長くなる傾向があります。
また、使用する装置によっても治療期間は異なります。たとえば、マウスピース型矯正装置は、従来のワイヤー矯正に比べて治療期間が短いです。
矯正治療を始める前に歯科医師に相談し、自分の歯並びの状態に合った治療方法や具体的な治療期間について確認しておきましょう。
裏側矯正と表側矯正の矯正期間の違い
歯列矯正を検討する際、「裏側矯正は表側矯正よりも治療期間が長い」という話を耳にすることがあるかもしれません。
以前は裏側矯正は技術的に難しく、治療期間が長くなる傾向がありました。しかし、近年では装置や技術の進歩により、裏側矯正でも表側矯正とほぼ同等の期間で治療を完了できるようになっています。
また、出っ歯の治療においては、裏側矯正の方が前歯を効率的に引き込むことができるため、表側矯正よりも早く治療効果が現れることがあります。
そのため、治療期間の長さを理由に裏側矯正を諦める必要はありません。見た目を気にせず矯正治療を行いたい方は、積極的に裏側矯正を検討してみましょう。
マウスピース型矯正とワイヤー矯正の治療期間の違い
マウスピース型矯正の中には、短期間での治療を謳っているものもあるので、気になる方もいるでしょう。実際には、同じ歯並びの症状を治療する場合、ワイヤー矯正に比べて治療期間が長くなることが多いです。
これは、ワイヤー矯正の方が歯を動かす力が強く、効率的に歯を移動させることができるためです。しかし、だからといって、マウスピース型矯正にメリットがないわけではありません。
マウスピース型矯正は、目立ちにくいため、矯正治療をしていることを周囲に知られずに治療を勧められます。また、金属のブラケットやワイヤーがないため、口内炎のリスクが低く、装着時の違和感も少ないです。さらに、食事や歯磨きの際には取り外せるので、口腔内を清潔に保ちやすく、日常生活への影響も抑えられます。
矯正方法別の治療期間
部分矯正 (マウスピース・裏側) |
マウスピース 全体矯正 |
裏側矯正 全体矯正 |
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矯正方法 |
矯正方法 |
矯正方法 |
マウスピース、または裏側矯正(歯の裏側につくワイヤーの装置)が選べます | 透明なプラスチックのマウスピースを装着します | ブラケットとワイヤーを歯の裏側に装着します |
対象範囲 前歯部分だけ (上顎か下顎の前歯 6 本) |
対象範囲 上下顎の 歯列全体 (対応できない症状もあり) |
対象範囲 上下顎の 歯列全体 (かみ合わせの改善に適している) |
対象の歯並び 前歯の凸凹、軽度の出っ歯、すきっ歯、八重歯など |
対象の歯並び 歯のガタガタ、出っ歯、八重歯など |
対象の歯並び 歯並び・かみ合わせの乱れ、難しい症状にも対応 |
矯正期間 数ヶ月〜 1 年 程度 ※ 症状によって異なります。 |
矯正期間 1 年〜 2 年半 程度 ※ 症状によって異なります。 |
矯正期間 1 年〜 2 年半 程度 ※ 症状によって異なります。 |
矯正中の通院頻度
矯正治療中の通院頻度は、治療方法や治療段階によって異なります。
ワイヤー矯正(表側・裏側矯正)の場合は、一般的に3週間~1ヶ月に1回の通院が必要です。治療開始直後は、装置の調整に加えて歯と歯の間を少し削るディスキングや歯に小さな突起を付けるアタッチメントの接着、顎の骨に固定するためのアンカースクリューの設置などを行う場合があり、通院頻度が少し多くなることがあります。
マウスピース型矯正では、1ヶ月~3ヶ月に1回の通院で済みます。これは、患者さん自身でマウスピースを交換していくため、ワイヤー矯正のように頻繁に調整する必要がないからです。治療が順調に進み、歯の動きが安定してきた場合は、通院間隔を空けることができることもあります。ただし、これはあくまで歯科医師の判断によるものです。
通院は装置を調整するためだけではありません。歯の動きや口腔内の状態をチェックし、虫歯や歯周病の予防、治療計画の見直しなどを行うためにも、歯科医師の指示に従って、きちんと通院しましょう。
歯列矯正の期間を短くするには?
「歯列矯正の治療期間を少しでも短くしたい」そう思っている方は多いのではないでしょうか。ここでは、患者さま自身ができることを紹介します。
お口の健康を保つ
虫歯や歯周病になると、矯正治療を中断しなければならない場合もあります。毎日の歯磨きを丁寧に行い、口腔内を清潔に保ちましょう。歯間ブラシやデンタルフロスも効果的です。
悪習慣を改善する
舌で歯を押したり頬杖をついたりする癖は、歯並びに悪影響を与え、治療期間を長引かせる可能性があります。意識して改善するようにしましょう。
体の代謝を上げる
バランスの取れた食事、規則正しい生活、質の高い睡眠を心がけることで体全体の代謝が向上し、歯の周りの組織の再生も活性化される可能性があります。適度な運動もおすすめです。
予約を守り歯科医師の指示に従う
予約の変更やキャンセルは、治療期間の延長に繋がります。必ず予約を守りましょう。また、矯正ゴムの使用やマウスピースの装着時間などは、治療計画に基づいて決められていますので、歯科医師の指示に従ってください。
食事に注意する
特にワイヤー矯正の場合は、硬い食べ物や粘着性のある食べ物は装置を破損させる可能性があります。装置が外れてしまうと、治療期間が延びてしまうので注意が必要です。
トラブル発生時はすぐに連絡する
装置が外れたり、破損したりした場合は、放置せずにすぐに矯正歯科へ連絡しましょう。迅速に対応することで、治療への影響を抑えられます。
保定期間について
一般的に、保定期間は矯正治療にかかった期間と同じくらい、もしくはそれ以上に必要と言われています。たとえば、2年間矯正治療を行った場合は、2年以上、保定装置を使用することが理想的です。さらに、治療後の歯の状態や噛み合わせによって、個人差があります。当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせて、適切な保定期間と装着時間をご案内いたします。
リテーナーの装着について
マウスピース型のリテーナーは、食事や歯磨きの時以外は装着していただく必要があります。装着時間は、歯周組織の状態を見ながら、徐々に短くしていくことができます。
リテーナーは、歯を積極的に動かす矯正装置とは異なり、歯を安定させるための装置です。そのため、矯正治療中のような痛みや違和感はありません。ご安心ください。
保定期間をしっかり守ることで、美しい歯並びを長く維持することができます。保定期間中は、定期的な検診も大切です。何かご不明な点がありましたら、お気軽にご相談ください。